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芸術家関連データリスト

 『人間喜劇』には、歴史上実在した人間から小説中の架空の人物まで、諸分野の芸術家が数多く登場する。彼らに関連して、活躍する劇場や芸術のジャンルについての名称も頻繁に記述される。これらの語が出現する回数をさまざまな基準から分類すると、バルザックの世界がよりよく見えてくるのではないだろうか。

 例としてあげる下の図表からは、実在の画家としてはルネサンスの三人の天才と17世紀のオランダとフランドルの巨匠がバルザックの小説において最も頻繁に言及されていることがわかる。その中でもラファエロは突出している。

 考察の出発点となる種々のデータを提供するのが、このページの目的である。下記のタイトルの前にアスタリスクの記号(*)があるものは、準備中であることを示す。

 フランス語表記は、括弧内にあるフランス語タイトルをクリックするとフランス語リストに移動するので、そのページで確認できる。



 

 『人間喜劇』の実在画家: 出現回数最上位20人
Les peintres réels dans la Comédie humaine: les 20 personnes les plus citées

氏名
Nom et prénom
生没年
Naissance/Désès
出身
Pays d'origine
回数
Occurrences
1ラファエル(ラファエッロ)1483-1520italien139
2リュバンス(ルーベンス)1577-1640flamand31
3ミケランジュ(ミケランジェロ)1475-1564italien29
4ランブラン(レンブラント)1606-1669hollandais28
5ド・ヴァンスィ(ダ・ビンチ)1452-1519italien25
6ジロデ1767-1824français24
7ジェラール1770-1837français21
8デュレール(デューラー)1471-1528allemand19
9ミュリロ(ムリーリョ)1617-1682espagnol16
10ダヴィッド1748-1825français14
グルーズ1725-1805français14
12シャルレ1792-1845français13
ドヴ(ヘリット・ダウ)1613-1675hollandais13
14グロ1771-1835français12
リュイーニ(ルイーニ)v.1480-1522italien12
16コレージュ(コレッジョ)v.1480-1534italien11
ピオンボv.1485-1547italien11
ヴァトー(ワトー)1684-1721français11
19ドラクロワ1798-1863français10
パリッシーv.1510-v.1589français10
オラス・ヴェルネ1789-1863français10

名前はフランス語での読みのカタカナ表記で示す。括弧の中では日本での通常の呼び名を記す。


 

 バルザック原作のオペラ制作年表

初演(推定年)/言語《タイトル》ジャンルと幕数原作(刊行年)作曲家台本作家/公演劇場(注記)
11839/04/15 仏《13人組》オペラ・コミック3幕『13人組』(三部作、1833-1839)フロマンタル・アレヴィウジェーヌ・スクリブ/オペラ=コミック座(ヌヴォーテ劇場)
21839/09/02 仏《シェリフ》オペラ・コミック3幕『コルネリュス卿』(1832)フロマンタル・アレヴィウジェーヌ・スクリブ/オペラ=コミック座(ヌヴォーテ劇場)
31839/12/09 仏《エヴァ》叙情ドラマ『アデュー』(1830)ピエトロ・アントニオ・コッポラレオン=レヴィ・ブランズウィック&アドルフ・ド・ルーヴェン
4(1888) 仏《不屈の恋》『艶笑滑稽譚第三輯(しゅう)』(1837)リシャール・ディヴリ(未上演)
51910/02 仏《赤い宿屋》2幕『赤い宿屋』(1831)ジャン・ヌゲスセルジュ・バセ/ニース歌劇場
61912/01/18 独《シャベール大佐》音楽悲劇3幕『シャベール大佐』(1832)ヘルマン・ヴォルガング・フォン・ヴァルタースハウゼン(ドイツでは100回以上の公演、2010年ベルリン・ドイツ・オペラ公演動画あり)
71913/03/28 仏《ブルテッシュ城》叙情ドラマ『続・女性研究』内の挿話「グランド・ブルテッシュ」(1832)アルベール・ドゥピュイニース歌劇場
81927/05/05 伊《マダム・インペリア》音楽喜劇1幕『艶笑滑稽譚第一輯(しゅう)』(1832)フランコ・アルファーノアルトゥーロ・ロッサート/トリノ歌劇場
91929 仏《あら皮》叙情喜劇4幕『あら皮』(1831)シャルル・ルヴァデピエール・デクールセル&ミシェル・カレ/オペラ=コミック座
101935/03/23 仏《マルヴィナ》オペレッタ3幕バルザックが登場人物として、部分的に『鞠打つ猫の店』(1830)からレイナルド・アーンモーリス・ドネー&アンリ・デュヴェルノワ/ゲーテ=リリック座
111937/03/02 独《マッシミラ・ドーニ》『マッシミラ・ドーニ』(1839)オトマール・シェックアルミン・リューガー/ドレスデン歌劇場、カール・ベーム指揮
121937 仏《なんと仲睦まじく》オペラ・コミック2幕『結婚生活の小さな不幸』(1830)アンドレ・ラヴァーニュマルセル・ベルヴィアーヌ/オペラ=コミック座
131939 仏《コルネリュス卿》オペラ3幕『コルネリュス卿』(1832)イヴォンヌ・デポルトマルセル・ベルヴィアーヌ
141951/07/01 仏《咄嗟の機転》音楽喜劇1幕『艶笑滑稽譚第一輯(しゅう)』(1832)ジャン・フランセジャン・フランセ/アムステルダム歌劇場
151954 仏《誓い》オペラ2幕『続・女性研究』内の挿話「グランド・ブルテッシュ」(1832)アレクサンドル・タンスマンドミニク・ヴァンサン/1963年ニース歌劇場(2004年Radio française録音は現在も放送される)
161954 英《フランダースの奇跡》オペラ1幕『フランドルのイエス・キリスト』(1831)ルイス・グルーエンバーグ(アメリカのテレビ放送用オペラ)
171955 英《取り返しのつかない誓い》『続・女性研究』内の挿話「グランド・ブルテッシュ」(1832)ボリス・クーツェンアメリカ
181956/01 英《ラ・グランド・ブルテッシュ》オペラ1幕『続・女性研究』内の挿話「グランド・ブルテッシュ」(1832)エイヴリー・クラフリンウィーンのコロンビア・スタジオ収録
191957/02/10 英《ラ・グランド・ブルテッシュ》『続・女性研究』内の挿話「グランド・ブルテッシュ」(1832)スタンリー・ホリングスワースニューヨーク、NBC
201959/06/14 独《死に至る願い》オペラ3幕『あら皮』(1831)ギーゼルヘル・クレーべギーゼルヘル・クレーべ/デュッセルドルフ
211967/04/27 仏《ランジェ公爵夫人》叙情ドラマ3幕『ランジェ公爵夫人』(1834)ウジェーヌ・ボンザフェリックス・フォルテ/リール歌劇場
221978/06/02 仏《ガンバラ》オペラ2幕『ガンバラ』(1837)アントワーヌ・デュアメルロベール・パンサール・ベッソン/リヨン歌劇場
231978 独《あら皮》『あら皮』(1831)フリッツ・ガイスラーグンター・ダイケ
241982 仏《ふくろう党》『ふくろう党』(1829)アラン・ヴァンゾフランシス・ディドロ/アヴィニョン歌劇場
251983/03/02 独(英)《イギリス牝猫》オペラ2幕『イギリス牝猫の恋の悩み』(1840)ハンス・ヴェルナー・ヘンツェエドワード・ボンド/シュトゥットガルト歌劇場
261990 露《あら骨》3幕バレエと幕間オペラ『あら皮』(1831)ユーリ・カノンユーリ・カノン/サンクトペテルブルク、マールイ劇場
271991 英《サラジーヌ》『サラジーヌ』(1831)ニコラス・ブルームフィールドネイル・バートレット/リリック・ハマースミス劇場
281998/11 英《ブランシュあるいは贖い能う罪》室内オペラ1幕『艶笑滑稽譚第一輯(しゅう)』(1832)(あがないあとう)ベンジャミン・ヤーモリンスキーニューヨーク、オペラ・プロジェクト劇団
291999/02/26 仏《B氏が自らのお芝居をなさる》バルザックの生誕二百年を記念するオペライザベル・アブルケールレミ・ローレイヤールイ/トゥール歌劇場
302005/05/07 英《イフ・オンリー》『ゴリオ爺さん』(1835)クレイグ・カーライルマチュー・グロズビー/ウエスト・ハリウッド、グローブ・プレイハウス
312017/03/16 仏《死神だまし》オペラ2幕『娼婦の栄光と悲惨』(1838-1847)ルカ・フランチェスコーニルカ・フランチェスコーニ/パリ・オペラ座

Cf. Dictionnaire Balzac, sous la direction d’Éric Bordas, Pierre Glaudes et Nicole Mozet, 2 volumes, Classiques Garnier, 2021.

・澤田が作成した年表内の情報は上記『バルザック辞典』の項目に記載されているものと合致する。ただし[18] エイヴリー・クラフリン作曲のオペラは、辞典では1957年ニューヨークのNBCテレビで初演とあるが、レコード・データベース(https://www.discogs.com)に掲示されている1956年の方が制作年は先行するのでこちらの方を記載する。

・最も制作回数の多い作品は「グランド・ブルテッシュ」(1832)で5回、二番目は『あら皮』(1831)で4回。

・クロード・ドビュッシー《グランド・ブルテッシュ》(1895)は構想のみで、作曲は実現しなかった。

 


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