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研究書と翻訳(画像付き)
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icon 研究書と翻訳(画像付き) Études et Traductions (avec images)
籍として刊行されているバルザックの研究書および翻訳の書誌情報を、表紙の画像とともに紹介します。なお、宣伝文は各図書の帯などに掲載されているものをそのまま転記したものです。
2024年 2023年 2022年 2021年 2020年 2019年 2018年 2017年 2016年 2015年 2014年 2013年 2012年 2011年 2010年 2009年 2007年 2006年 2005年 2003年 2002年 1999年 1997年 1996年 1995年 1994年 1993年 1992年 1989年 1984年 1982年 1979年 1978年 1973年

2024年

Balzac, une création théâtrale 1839-1848
Yoshie Oshita, Classiques Garnier, 2024

Cette étude propose de relire trois pièces de Balzac et de retracer leur genèse et l’histoire de leurs représentations afin de les réhabiliter. Proches par leurs sujets, elles ont, chacune, leur originalité propre, que fait ressortir l’analyse de leurs sources littéraires, internes et externes.

佐野栄一『セザンヌと『知られざる傑作』: 近代絵画の誕生と究極美の探求』
三元社、2024年、296ページ

バルザック『知られざる傑作』の、究極の美を求めた果てに破滅する主人公フレノフェールこそ「私だ」とセザンヌは自分を指さした。
画家をめざす友を信じて励まし続けてきたゾラ。だが彼の小説『制作』はセザンヌの探求する〈美〉を理解しえないことを晒し、二人は決別する。
二つの小説を手がかりに、近代美術誕生期の芸術観と、その渦中で生きた者たちの友情の機微に深く分け入る。

谷本道昭『バルザック研究アラカルト―コントから小説の方へ』
春風社、2024年、424ページ

「人間喜劇」の作者バルザックとして固定化、伝説化してきた作家像によって覆い隠された姿に目を向け、その形象を浮かび上がらせる。

吉野内美恵子『バルザック『あら皮』研究―ダンテとラブレーから読み解く複合的構想』
水声社、2024年、247ページ

『あら皮』の結末から、天国を透かし見る。ダンテとラブレーの精読を経て、悪魔に魂を売った破滅の物語の『あら皮』は、罪の浄化というもう一つの物語に反転する―。「風俗研究」と「哲学的研究」の架橋を目論むバルザックの広大な構想が明らかに。

和田恵里・荒木善太・福田美雪共編『オペラの時代 音楽と文学のポリフォニー』
水声社、2024年。

近代の首都パリとオペラ 人々がオペラに熱狂した近代のパリを舞台に、オペラと文学の相互作用が奏でる豊穣なポリフォニーの世界とは? 音楽史と文学史を越境する、多様なアプローチによる7つの鮮烈なオペラ論。(http://www.suiseisha.net/blog/?p=19480
巻頭の論考:澤田肇「バルザックの『十三人組物語』と『娼婦の栄光と悲惨』 オペラにおける借用から翻案まで」、15-51頁。

2023年

村田京子『モードで読み解くフランス文学』
水声社、2023年、368ページ

19世紀フランスの作家たちは、服装の記号を駆使していかに作品を描いたのか? ①フランス革命と服飾(バルザック『ふくろう党』)、②変装する女性(サンド『アンディヤナ』)、③ダンディズム(バルザック『幻滅』)、④「モードの女王」(バルザック『骨董室』『カディニャン公妃の秘密』)、⑤オートクチュールの世界(ゴンクール『シェリ』)、⑥デパートによる「女の搾取」(ゾラ『ボヌール・デ・ダム百貨店』)[白黒およびカラー図版多数あり](http://www.suiseisha.net/blog/?p=18887

小倉孝誠(編)『批評理論を学ぶ人のために』
世界思想社、2023年、316ページ

世界思想社から刊行されている「…を学ぶ人のために」シリーズの1冊。現時点における文学批評理論としてどのようなものがあり、今後どのような展望を拓いていくかを幅広く解説する。理論の解説と、それを用いて個別の作品を読み解く「実践編」で構成される。全19章からなり、バルザックがしばしば言及されている。とくに第3章「受容理論」では『モデスト・ミニョン』、第9章「生成論」では『幻滅』、そして第12章「ソシオクリティック」では『金色の眼の娘』がおおきく扱われている。

2022年

バルザック『ラブイユーズ』
國分俊宏訳、光文社古典新訳文庫、2022年、752ページ

共感度ゼロ! フランス文学史上最強の悪党、参上!
痛快すぎる展開に舌を巻く、“人間喜劇”屈指のピカレスク大作

元近衛竜騎兵のフィリップは、酒や賭博に興じ、勤め先や家族の金を使い込んだ挙げ句、軍の謀議に関与して収監される始末。息子を溺愛する母は、釈放に必要な金を工面しようと実家の兄に援助を求めるが、そこでは美貌の家政婦とその恋人が家長を籠絡して実権を握っていたのだった……。 この小説もまた、物語作者としてのバルザックの魅力が存分に発揮され、かつさまざまなテーマが凝縮された掛け値なしの傑作です。筋のおもしろさでいえば、数あるバルザックの作品の中でも群を抜いています。――訳者

2021年

小倉孝誠『歴史をどう語るか 近現代フランス、文学と歴史学の対話』
法政大学出版局、2021年、324ページ

大革命以降の二世紀間、フランスの文学と歴史学は、旧い世界の神話を解体し、新しい社会の現実を表象・再現・記録しようとしてきた。法や文明を問うユゴーやフロベールらの実験小説、ミシュレからコルバンにいたる社会史、そして近年の「エグゾフィクション」の流行に至るまで、リアリズムと虚構の方法を発明し、互いに深く影響しあった両者の関係を、19世紀文学研究の第一人者が描き出す。バルザックへの言及も多数あり。

2020年

柏木隆雄『バルザック詳説―「人間喜劇」解読のすすめ―』
水声社、2020年、全452頁。

一言一句、目を凝らすようにして小説世界を追いかけると、ぴたりと符号する文字の並び、登場人物の変化、会話の妙、読者を巻き込む位相、そして他の作品への目配せ―バルザックの『人間喜劇』に張り巡らされた仕掛けが動き出す、冴え渡る読みの手ほどき!

2019年

村田京子『イメージで読み解くフランス文学――近代小説とジェンダー』
水声社、2019年。

本書は19世紀フランス文学(スタール夫人、バルザック、ゾラなど)を、作品と関連のある絵画や彫像などのイメージを媒介にして、ジェンダーの視点で読み解いている。さらに、本書の特徴はとりわけ、19世紀当時の「女らしさ」「男らしさ」の範疇から外れる人物に絞って、作品を分析していることにある。バルザックに関しては、『人間喜劇』における「宿命の女」像を『砂漠の情熱』『娼婦盛衰記』『従妹ベット』を中心に探っている(白黒図版の他にカラー図版も多数掲載)。

澤田肇ほか編『《悪魔のロベール》とパリ・オペラ座 ―19世紀グランド・オペラ研究―』
上智大学出版、2019年。

総合芸術の頂点に君臨する「グランド・オペラ」—19世紀パリが生んだ、その豪奢な世界への誘い。音楽・文学・美術・建築・比較文化の見地から、グランド・オペラの代表作《悪魔のロベール》の魅力と19世紀という時代の心性に多角的に迫る本邦初の研究書。澤田担当箇所は、序章「ロマン主義新時代のオペラ《悪魔のロベール》」と第III部「パリ・オペラ座という空間」の中の一章「文学の中のオペラ座 —バルザックの《悪魔のロベール》論を中心に」(p. 276-298)。

2018年

バルザック『イヴの娘』
宇多直久訳、春風社、2018年。

1839年発行の小説。83年ぶりの邦訳。ヒロインに司法官グランヴィルの二人の娘。一人は『谷間の百合』のヴァンドネスと、もう一人は『セザール・ビロトー』のデュ・ティエと結婚した。舞台は1834年頃のパリ社交界。貴婦人たちはヴァンドネス伯爵に復讐しようと、若い伯爵夫人を野心的作家のナタンの方へ押しやって遊ぼうとする。銀行家のモダンな家、貴族の大夜会、作家の新聞事業、ヴォードヴィル女優の室内、ボヘミアン音楽家の屋根裏の天国など。会話はフランス的エスプリに富んでいる。

2017年

『バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集④ 老嬢』
水声社、2017年。

[収録作品]
『老嬢』私市保彦訳、『ボエームの王』片桐祐訳、『コルネリュス卿』私市保彦訳、『二つの夢』私市保彦訳.

アランソンで一大サロンを築くコルモン嬢をめぐり、水面下で婿の座争いが起こる。老嬢を射止めるのは文なしの老騎士か、中産階級の商人か、貧しく純情な青年か? コミカルな表題作ほか、「ボエームの王」「コルネリュス卿」「二つの夢」の四篇。

『バルザック王国の裏庭から―『リュジェリーの秘密』と他の作品集』
宇多直久編訳、春風社、2017年。

バルザックの歴史小説で哲学研究『リュジェリーの秘密』(『カトリーヌ・ド・メディシス』の第三部。1836年作品)の新訳と、この小説に至るいくつかの私信、小品(「石のダンス」「パリだより第十一信」「物乞うひと」「パリからジャワへの旅」抄、「神の木鐸たち」など)を執筆順に収録する。巻末に当時のパリ街路事典、歴史的登場人物の紹介を併載した。

『バルザックの文学とジェンダー ―女性作家との比較から分かること』
東辰之介著、春風社、2017年。

バルザックはフェミニスト、それともアンチ・フェミニスト? 同時代の女性作家の作品と比較検討することにより、男性作家だけを読んでいては捉え難い文学の豊かさの総体に迫る。

2016年

『バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集② 二人の若妻の手記』
水声社、2016年。

[収録作品]
『二人の若妻の手記』芳川泰久訳、『女性研究』加藤尚宏訳.

恋を夢見、ともに少女時代を過ごした修道院を去ることとなったルイーズとルネ。恋愛と政略という、互いの対照的な結婚生活を手紙で綴る、書簡体小説の名作! 表題作ほか、堅物の夫人に誤って届けられた恋文をめぐる騒動を描く「女性研究」の二編。

『バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集③ マラーナの女たち』
水声社、2016年。

[収録作品]
『オノリーヌ』加藤尚宏訳、『シャベール大佐』大下祥枝訳、『マラーナの女たち』私市保彦訳、『フィルミアーニ夫人』奥田恭士訳、『徴募兵』東辰之介訳.

十三世紀から続く、娼婦の家系のラ・マラーナは、娘ジュアナの将来を憂い、厳しく娘の貞操を守っていた。そこに遊び人のモンテフィオーレ侯爵が現れて… 血に呪縛された女の生き様を描いた表題作ほか、「オノリーヌ」「シャベール大佐」「フィルミアーニ夫人」「徴募兵」の五篇。

『対訳 フランス語で読む「ゴリオ爺さん」』
松村博史著、白水社、2016年。

『ゴリオ爺さん』を原文の抜粋で読んでいきます。バルザックの作品は難解で手強いイメージがありますが、一文ごとに深い意味が込められており、そうしたニュアンスを読み解いていくことこそ、フランス語学習者の特権です。見開きで、原文、注、訳文、「読解のポイント」が読みやすくレイアウトされており、ミカエル・フェリエ氏のすばらしい朗読で、音声でもお楽しみいただけます。主人公ラスティニャックと共に、19世紀パリの人々の息づかいを感じてください。

『知られざる傑作』(『ピエール・グラスー』併録)
伊藤幸次訳、グーテンベルグ21、2016年。

一つの作品に打ち込む老画家の十年にわたる執念が狂気にまでいたる経緯を描く「知られざる傑作」。この作品は、世代の異なる画家3人をパリに集めて出会わせ、具象と抽象という造形芸術の永遠の問題をうきぼりにしてもいる。重厚な描写とあわせてバルザック特有の「軽み」にも意をもちいた改訳版である。併録した「ピエール・グラスー」は「知られざる傑作」の幻想的な雰囲気とは異なり、リアルな物欲・名誉欲にかられる人物たちをコメディー・タッチで描く。画家を主人公としたこの2作は、いわば能楽と狂言のような関係にある。後者の主人公は贋作作家であるが、当代注目されている公式肖像画家をモデルにしており、芸術と金銭・権力との関係に興味のある人には必読の書。両作ともに、豊富な参考画像と当代の事情を明らかにする詳しい解説を付した。 https://www.gutenberg21.co.jp/shirarezaru_kessaku.htm

『犯罪・捜査・メディア─19世紀フランスの治安と文化─』
ドミニク・カリファ著、梅澤礼訳、法政大学出版局(叢書ウニベルシタス)、2016年。

19世紀、犯罪や捜査はどのようにフランス文化の一側面を担うこととなったのか。犯罪文化史研究の第一人者が、バルザックやシューの小説や三面記事、警察官の回想録をもとにひもとく新しい社会史。

2015年

『バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集① 偽りの愛人』
水声社、2015年。

[収録作品]
『ソーの舞踏会』私市保彦訳、『二重の家庭』澤田肇訳、『偽りの愛人』加藤尚宏訳、『捨てられた女』博多かおる訳.

ラジンスキ伯爵に仕えるタデ・パス。思い焦がれる伯爵夫人に本心を気取られないように、サーカスの女芸人マラガに恋をしているとでっちあげるが...。愛と結婚によって狂わされていく女の悲劇を描いた全4篇を収録する。

『バルザック愛の葛藤・夢魔小説選集⑤ 三十女』
水声社、2015年。

[収録作品]
『三十女』芳川泰久訳、『家庭の平和』佐野栄一訳.

少女から母親へ、波乱にみちた奇想天外な女の人生が六部構成で壮大に語られる「三十女」ほか、謎の女と大粒のダイヤをめぐるミステリアスな「家庭の平和」の全2篇を収録する。

『ロマン主義文学と絵画―19世紀フランス「文学的画家」たちの挑戦』
村田京子著、新評論、2015年。

本書はフランス・ロマン主義文学と絵画の密接な関係を探るものである。文学作品で絵画が言及される場合、そこには芸術的要素だけではなく社会的要素、とりわけ人物像には「男らしさ」「女らしさ」に関する当時の社会的通念が無意識のうちに投影されている。それゆえ、本書ではジェンダーの観点から、 ロマン主義作家(バルザック、テオフィル・ゴーチエ、マルスリーヌ・デボルド=ヴァルモール、ジョルジュ・サンド)の作品を取り上げ、絵画受容の相違点を浮き彫りにしている。バルザックに関しては、第一部「『人間喜劇』と絵画」において、『毬打つ猫の店』『知られざる傑作』『ラ・ヴェンデッタ』を取り上げている。

『バルザック』
集英社ヘリテージシリーズ<ポケットマスターピース03>、2015年。

[収録作品]
『ゴリオ爺さん』博多かおる訳、『幻滅(抄)』野崎歓訳、『浮かれ女盛衰記 第四部』田中未来訳、「解説」(野崎歓)、「作品解題」「バルザック著作目録」「バルザック主要文献案内」「バルザック年譜」(博多かおる)

フランスの巨匠バルザックの魅力を集めた1冊。「悪と堕落の権化」たるヴォートランが暗躍する『ゴリオ爺さん』『幻滅(抄)』『浮かれ女盛衰記第四部』を収録し、“人間喜劇"の真髄を描く。

2014年

ソーの舞踏会 ─バルザック・コレクション
バルザック著、柏木隆雄訳、筑摩書房(ちくま文庫)、2014年4月

名門貴族の美しい末娘は、ソーの舞踏会で理想の男性と出会うが身分は謎だった……驕慢な娘の悲劇を描く表題作に、『夫婦財産契約』『禁治産』を収録。

オノリーヌ ─バルザック・コレクション
バルザック著、大矢タカヤス訳、筑摩書房(ちくま文庫)、2014年5月

理想的な夫を突然捨てて出奔した若妻と、報われぬ愛を注ぎつづける夫の悲劇を語る名編『オノリーヌ』、『捨てられた女』『二重の家庭』を収録。

暗黒事件 ─バルザック・コレクション
バルザック著、柏木隆雄訳、筑摩書房(ちくま文庫)、2014年6月

フランス帝政下、貴族の名家を襲う陰謀の闇―凛然と挑む美姫を軸に、獅子奮迅する従僕、冷酷無残の密偵、皇帝ナポレオンも絡む歴史小説の白眉。

澤田肇、北山研二、南明日香共編『パリという首都風景の誕生 フランス大革命期から両大戦間まで』
上智大学出版、2014年

パリはどのようにしてフランスの“首都”を形成していったのか。社会、経済、建築、芸術、文学等をテーマに多角的に検証する。第Ⅰ部「視覚に映る都市」、第Ⅱ部「計画が作る都市」、第Ⅲ部「文学が著す都市」という三部構成。澤田担当個所は、序章「光の都か花の都か? ―世界一魅力的な都市の成立」(pp. 1-6)と第Ⅲ部第一章「バルザックのパリ ―歴史・文学・神話」(pp. 213-250)。

澤田肇、吉村和明、ミカエル・デプレ共編『テオフィル・ゴーチエと19世紀芸術』
上智大学出版、2014年

19世紀を代表する詩人であり、小説、バレエ台本、旅行記から、文学・演劇・オペラ・美術などのあらゆる芸術ジャンルの批評にまで才筆をふるったテオフィル・ゴーチエ。その業績に光を当て、芸術の魅力を探る。澤田担当個所は、第二部「音楽、オペラ」の中の一章「バルザックとゴーチエ ―作家を創造する音楽とオペラ」(pp. 106-134)。

2013年

バルザック『神秘の書』
私市保彦・加藤尚宏・芳川泰久・大須賀沙織訳、水声社、2013年。

バルザックが目指した究極の美!
中世のパリで天上界を夢見る二人の異邦人を描いた「追放された者たち」、その卓越した想像力と知力のために寄宿舎学校や現実に耐えられず狂気に陥る青年「ルイ・ランベール」、両性具有の不思議な存在「セラフィタ」。バルザックに大きな影響を与えた神秘思想家スウェーデンボルグの思想を小説化した三篇に、本邦初訳の序文がついた、完全版。
バルザックが「私は書いたもののなかでもっとも美しい作品」と語った、『人間喜劇』の極北に位置しながら、『人間喜劇』全体に光を放射するバルザック文学の真骨頂!

2012年

Séraphîta et la Bible. Sources scripturaires du mysticisme balzacien.
Saori Osuga, préface de Dominique Millet-Gérard, Paris, Honoré Champion, 2012.

『セラフィタ』における聖書と神秘思想の源泉と展開をまとめた研究書。
第1部:バルザックとスウェーデンボルグが使用した聖書の文献学的調査と、『セラフィタ』に豊富に織り込まれた聖書テクスト・聖書的イメージの分析。
第2部:聖書から取られた3つの表象「熾天使」、「キリスト」、「御言葉」が、セラフィタ=セラフィトゥスにどのように投影されているかの考察。
第3部:『セラフィタ』に投入された神秘思想(『キリストにならいて』、アヴィラの聖テレサ、ヤコブ・ベーメ、アントワネット・ブリニョン、ギュイヨン夫人、フェヌロン、サン=マルタン、エッカルツハウゼン、スウェーデンボルグ)の研究。

Balzac et alii. Génétiques croisées. Histoires d'éditions.
Actes du colloque organisé par le Groupe International de Recherches Balzaciennes, sous la direction de Takayuki Kamada et de Jacques Neefs, 2012. (publication en ligne : http://balzac.cerilac.univ-paris-diderot.fr/balzacetalii.html)

国際バルザック研究会(GIRB)の主催により2010年6月にパリで開催され、鎌田隆行とジャック・ネーフがコーディネーターを務めたシンポジウムの報告集。バルザックを中心に据えた上で、スタンダール、ユゴー、フローベール、ゾラ、プルーストなど複数の作家の作品制作のあり方を考察することを主な目的とし、プランや自筆草稿等の資料に加え、校正刷り、新聞・雑誌掲載版や様々な版本などの「印刷物の生成論」も導入して生成論の新たな展開を模索した。

2011年

女がペンを執る時―19世紀フランス・女性職業作家の誕生
村田京子著、新評論、2011年。

ジョルジュ・サンドと同時代に生き、同じほど名を馳せていた三人の女性作家(ジャンリス夫人、デルフィーヌ・ド・ジラルダン、フロラ・トリスタン)を取り上げ、歴史に埋もれた女性職業作家たちの「書くことへの情熱」に光を当て、教育、政治と報道、貧困、ジェンダーなど現代にも通底するテーマを探っている。
第1部「男性作家から見た女性作家像」でバルザックの『ベアトリクス』を取り上げ、サンドをモデルとしたとされるカミーユ・モーパンを通してバルザックの女性作家像を分析している。

2010年

バルザック 『バルザック芸術/狂気小説選集① 絵画と狂気篇』
水声社、2010年。

[収録作品]
『鞠打つ猫の店』澤田肇訳、『財布』片桐祐訳、『知られざる傑作』芳川泰久訳、『ピエール・グラッスー』私市保彦訳、『海辺の悲劇』奥田恭士訳、『柘榴屋敷』佐野栄一訳.
(「BOOK」データベースより)
生命ある絵を追い求め、10年を費やし「カトリーヌ」を描いた老画家フレンホーフェル。長らく秘密にされていた、その絵の本当の姿が明らかになったとき、画家は...。ピカソやセザンヌが主人公に自分を重ね合わせたという表題作のほか、「絵画」と「狂気」が交錯する6篇を収録。

バルザック 『バルザック芸術/狂気小説選集② 音楽と狂気篇 ガンバラ他』
水声社、2010年。

[収録作品]
『ガンバラ』博多かおる訳、『マッシミラ・ドーニ』加藤尚宏訳、『ファチーノ・カーネ』私市保彦訳、『アデュー』大下祥枝訳.
(「BOOK」データベースより)
一人でオーケストラを再現する、その目的を果たすため作った奇妙な楽器で、狂気じみた演奏を行う音楽家ガンバラ。唯一、酔ったときにだけ、天才的な演奏をすることができるとわかり、ある企てに巻き込まれていく...。フランスで本格的に音楽を論じた最初の小説といわれる表題作ほか、「音楽」と「狂気」が交錯する4篇を収録。

バルザック 『バルザック芸術/狂気小説選集③ 文学と狂気篇 田舎のミューズ他』
水声社、2010年。

[収録作品]
『田舎のミューズ』加藤尚宏訳、『ド・カディニャン公妃の秘密』芳川泰久訳.
(「BOOK」データベースより)
吝嗇家の夫との田舎暮らしの虚しさを埋めるため、詩を書きはじめたディナ。それが話題となり、批評家ルーストーの愛人となった彼女は、とうとう夫を捨て、パリへと出てくるが...。ジョルジュ・サンドを彷彿させるような女作家を主人公とした表題作など、「文学」と「狂気」が交錯する2篇を収録。すべて新訳の新シリーズ第3段。

バルザック 『バルザック芸術/狂気小説選集④ 科学と狂気篇 絶対の探求他』
水声社、2010年。

[収録作品]
『絶対の探求』私市保彦訳、『赤い宿屋』私市保彦訳.
(「BOOK」データベースより)
ダイヤモンドを創造する、という考えに取り憑かれ、すべてを投げ打ち実験に没頭するバルタザール。一家は破産し、科学によって母をも奪われた娘が考え出したある策とは...そして男が行きついた果てとは? バルザック独自の科学観を垣間みることができる表題作と「赤い宿屋」の2篇を収録。

澤田肇「崩壊する風景を前にして ―バルザック『農民』における楽園の二重性」、中山真彦ほか編『危機のなかの文学』、
水声社、2010年(共著).

2009年

ゴプセック 毬打つ猫の店
バルザック著、芳川泰久訳、岩波書店、2009年。

巨万の富を握り、社会を裏で牛耳る高利貸、その目に映った貴族社会の頽廃。
天使のような美貌で、天才画家に見初められた商人の娘の苦悩。
私生活に隠された秘密、金銭がつなぐ物語の構造。
斬新な視点が作家バルザックの地位を築いた『私生活情景』の二作。

バルザック 語りの技法とその進化
奥田恭士編著、朝日出版社、2009年。

第1章 『結婚の生理学』と1830‐1832年雑誌掲載作品群(『結婚の生理学』と初期短編群;『不老長寿の霊薬』の「語り手」 ほか)
第2章 『コント・ブラン』と1832年‐1845年の試み—「レシ」と「カードル」のパッチワーク(『スペイン大公』—「レシ」の置き換え;『フランス閑談見本』—「レシ」の構成 ほか)
第3章 命名された語り手—三人称化への試み(語り手の確立—ビアンションの形成;『女性研究』の「語り手」ビアンション ほか)
第4章 『海辺の悲劇』と1834年以降の試み(「語り手」の構造化—『海辺の悲劇』;新たな「私」の模索—『谷間の百合』『ルイ・ランベール』『ファチノ・カーネ』『Z・マルカス』 ほか)

バルザック 「脳」と「知能」の小説家
東辰之介著、水声社、2009年。

「近代リアリズム文学」の怪物バルザックは、なぜ「脳」に執着し、「脳」を描いたのか? 脳生理学から、バルザック秘術の人間学に肉薄する。 気鋭の研究者による、斬新なバルザック論の試み。

2007年

艶笑滑稽譚
バルザック著、石井睛一訳、岩波書店、2007年3月。

ヨーロッパの伝統「コント」の系譜に連なり、ラブレー『ガルガンテュア物語』『パンダグリュエル物語』へのオマージュとなる本書は、『人間喜劇』の作者バルザックの隠れた名作である。
漢字・ルビを多用した流麗な擬古文により、ユーモアと言葉遊びに富む原作の香りを存分に伝える。

バルザック幻想・怪奇小説選集(水声社, 全5巻, 2007年。)
 

(第1巻)百歳の人 魔術師
バルザック著、私市保彦訳、水声社、2007年。

夢想を誘う七月の真夜中、岩山の懐からは煙が立ち上り、父親思いの優しい娘が失踪する。
鍵を握るのは、若き天才ベランゲルト将軍の生涯につきまとう不気味な老人。
人間を「束の間の生の子ら」と呼ぶ彼が姿を現すところ、不可解な事件が起こる。
怪奇、幻想、ゴシック的恐怖…未来の大小説家の出発点となった流行小説、本邦初訳。

(第2巻)アネットと罪人
バルザック著、澤田肇・片桐祐共訳、水声社、2007年。

美女と海賊、そして悪夢。
運命の警告に怯えながらも、天使のように清純な少女は破滅の愛へと突き進んでゆく…。
バルザック青年期の大作本邦初訳、第2弾。

(第3巻)呪われた子 他
バルザック著、私市保彦編、水声社、2007年。

古い家柄の貴族の子として生まれながら、父に呪われて海辺の小屋に暮らす少年エティエンヌ。
母のたおやかな愛と自然の神秘に育まれたこの繊細な魂は、しかし、封建制度と戦乱の時代に翻弄されてゆく(「呪われた子」)。
厖大な人物を織り込んだ大作の根底をなすともいえる、神秘に彩られた人生を描いた短編集。

[収録作品]
「サラジーヌ」(芳川泰久訳)、「エル・ベルドゥゴ」(澤田肇訳)、「不老長寿の薬」(私市保彦訳)、「フランドルのキリスト」(加藤尚宏訳)、「砂漠の情熱」(片桐祐訳)、「神と和解したメルモス」(奥田恭士訳)、「続女性研究」(加藤尚宏訳)、「呪われた子」(私市保彦訳)

(第4巻)ユルシュール・ミルエ
バルザック著、加藤尚宏訳、水声社、2007年。

裕福な医者ミノレと、その養女ユルシュールを軸に展開する遺産相続の悲喜劇。
保護者を亡くした娘は、その命さえ脅かされて…「人間喜劇」らしい活気溢れる人間描写の中に埋め込まれた神秘的なメスメリズムが、ユルシュールの運命の変転の鍵を握る。

(第5巻)動物寓話集 他
バルザック著、私市保彦・ 大下祥枝共訳、水声社、2007年。

恋する牝猫、旅する雀、おしゃれなライオン…時代と社会を観察し尽くした辛辣な一大風俗絵巻!グランヴィルの挿画に彩られた表題作に、「魔王の喜劇」「廃兵院のドーム」を収録し、「諷刺と諧謔の作家」バルザックに光をあてる。

[収録作品]
「動物寓話集」(私市保彦訳)、「魔王の喜劇」(大下祥枝訳)、「廃兵院のドーム」(大下祥枝訳)

2006年

娼婦の肖像 ロマン主義的クルチザンヌの系譜
村田京子著、新評論、2006年。

ロマン主義文学における娼婦像をジェンダーの視点から分析している。
考察の対象は『マノン・レスコー』『椿姫』『レ・ミゼラブル』など多岐にわたるが、本書第二部でバルザックの『マラナの女たち』『娼婦盛衰記』『従妹ベット』を取り上げ、男の眼に「危険な存在」として映る娼婦性とはどのようなものかを社会的背景を考慮に入れながら探っている。

La stratégie de la composition chez Balzac : essai d'étude génétique d'un grand homme de province à Paris
Takayuki Kamada, préface de Jacques Neefs, postface de Roland Chollet, Surugadai-shuppansha, 2006.

3年半にわたってフランス学士院図書館で行ったバルザック『パリにおける田舎の偉人』の生成資料の整理および解読にもとづき、同作品の創作過程における主題や語りの形式の大胆な変容を明らかにするとともに、草稿の逐次的な執筆と校正刷りでの修正を交互に行う作者の特異な制作方法のメカニズムを分析し、両者の緊密な関係を解明した。またこの原資料の大部分の転写(翻刻)を行い、注解を付して収録した。, 本著作はHistoires littéraires誌第27号(2006年)の書評にて取り上げられた。

2005年

バルザック生命と愛の葛藤
加藤尚宏著、せりか書房、2005年。

『あら皮』の護符に宿る生命の神秘、『谷間の百合』の愛と憂愁に悩むモルソーフ夫人など、19世紀前半フランスのあらゆる社会階級に生きる男女の情熱が織りなす人生(特に女性)の縮図を克明に読み解いた著者の長年にわたるバルザック論の集大成。

2003年

バルザックとこだわりフランス : ちょっといい旅
柏木隆雄編、恒星出版、2003年。

従来のガイド・ブックにない親切な記述。
バルザックを知らない人でも迷わず理解できる作品紹介と物語解説。
本文で案内した場所に行くためのアクセスガイド付き。
街歩きを楽しめる詳細ルートマップ付き(パリ編)。

Les métamorphoses du pacte diabolique dans l'œuvre de Balzac
Kyoko Murata, préface de Nicole Mozet, OMUP, Klincksieck, 2003.

もはや「悪魔」という超自然的な存在が信じられなくなった近代社会において、「悪魔との契約」は何を意味するのか、バルザックの作品を通じて考察している。さらに『人間喜劇』において「幻想空間」から「現実空間」へ移行するにつれ、「悪魔」がどのような形で捉えられ、「悪魔との契約」のテーマがどのように変貌していったのか、その過程を探っている。

2002年

バルザックを読む (1.対談篇、2.評論篇)
鹿島茂, 山田登世子編、藤原書店、2002年。

[1 : 対談篇]
バルザックを知らない人でも迷わず理解できる作品紹介と物語解説。
気鋭の現代作家、学者、漫画家ら10名が、独自の視点から「人間喜劇」の魅力と衝撃を熱く語る。
文学、宗教学、社会学、歴史学、経済学、風俗、蒐集、錬金術—「人間喜劇」の宇宙全体に迫る。
[2 : 評論篇]
40人を越える多彩な執筆陣が、「人間喜劇」の魅力を余すところなく浮き彫りにする。
壮大なスケールで繰り広げられ、21世紀を切り拓く知恵に満ちた「人間喜劇」の全体像が見渡せる待望の一冊。

2000年

謎とき「人間喜劇」
柏木隆雄著、筑摩書房、2000年。

19世紀の大作家オノレ・ド・バルザックが、人間の生きとし生ける様すべてを活写することをもくろんだ小説の金字塔『人間喜劇』。
人間のあくなき営みを情け容赦なく描くこの100余編の作品に隠された「謎」を周到なテクストの読みによって解き明かし、複雑きわまる物語の関連や構図をみごと浮き彫りにする。
作品の随所にちりばめられた「黄金」という言葉、主人公の没落にともない色濃くなる水のイメージ…。
バルザック没後150年の今、人生の辛辣にして奥深い真実に光が当たる。
文庫書きおろし。

1999年

闘う小説家バルザック
芳川泰久著、せりか書房、1999年。

十九世紀初め、パリのパサージュを通行する群衆のなかに小説の登場人物と読者を発見し、彼らの欲望が織りなす来るべき近代社会の縮図を全く新しい知的パラダイムのもとに壮大な小説群『人間喜劇』として描きだしたバルザックの創造の秘密に迫る野心作。

「人間喜劇」セレクション(藤原書店,全15巻, 1999-2002年.)
 

(第1巻)ペール・ゴリオ パリ物語
バルザック著、鹿島茂訳/解説、藤原書店、1999年。

パリのヴォケール館に下宿する法学生ラスティニャックは野心家の青年である。
下宿にはゴリオ爺さんと呼ばれる元製麺業者とヴォートランと名乗る謎の中年男がいる。
伯爵夫人を訪問したラスティニャックは、彼女が、ゴリオの娘だと知らずに大失敗をする。
ゴリオは二人の娘を貴族と富豪に嫁がせ、自分はつましく下宿暮らしをしていたのだ。
ラスティニャックはゴリオのもう一人の娘に近づき社交界に入り込もうとするが、金がないことに苦しむ。
それを見抜いたヴォートランから悪に身を染める以外に出世の道はないと誘惑されるが、ヴォートランが逮捕され、危やうく難を逃れる。
娘たちに見捨てられたゴリオの最期を見取った彼は、高台の墓地からパリに向かって「今度はおれとお前の勝負だ」と叫ぶ。

(第2巻)セザール・ビロトー ある香水商の隆盛と凋落
バルザック著、大矢タカヤス訳/解説、藤原書店、1999年。

明けても暮れても夜逃げ倒産のニュースで騒がしいこの不景気日本の運命をかこつ者が、そんな事態は洋の東西、古今を問わず、珍しくもなんともないと知って慰めになるかどうかは定かでない。
だが、今から約二百年前のフランスでも倒産騒ぎは日常茶飯事、まじめ一方、商売一筋の香水商もちょっと気をゆるめたばかりに不運と悪意につけこまれ、あっという間に倒産の憂き目。
ただ当時のフランス、今の日本でも珍しいのは、破産宣言を受けたこの男が、なにがなんでも負債を全額返済しようとする律義さ。
破産してしまえば負債は帳消し同然、あとはまたうまくやるさ、と考える輩の多いこの世の中で、その努力はまさに第一級の貴重品。
彼の大奮闘の首尾やいかに。さあ、お立ち会い、お立ち会い…。

(第3巻)十三人組物語
バルザック著、西川祐子訳/解説、藤原書店2002年。

パリで暗躍する、冷酷で優雅な十三人の秘密結社の男たちにまつわる、傑作3話を収めたオムニバス小説。

(第4・5巻)幻滅 メディア戦記
バルザック著、野崎歓・青木真紀子訳/解説、藤原書店、2000年。

純朴な田舎の美青年リュシアンは文学的野心に燃え、地元社交界のスターである人妻とパリへ出奔するが、彼女に捨てられてしまう。
理想に殉じ清貧に甘んじる青年詩人たちと知り合った彼は、その同志となる。
だが安食堂で出会ったジャーナリストの手引きにより、いつしか新聞・出版業界の裏側へと迷い込む。
そこで彼が見たものは、お追従記事や事実の捏造、いんちきの署名等々。
メディアの汚濁に浸かりきった元詩人は、幻滅の果てに帰郷する。
すると印刷業に精を出す、親友にして義弟ダヴィッドが同業者に騙され、おまけにリュシアンのミスのせいで逮捕されてしまった!

(第6巻)ラブイユーズ 無頼一代記
バルザック著、吉村和明訳/解説、藤原書店、2000年。

主人公フィリップ・ブリドーは元ナポレオン軍兵士で、放蕩無頼のかぎりを尽くしたあげくパリを追放される。
彼は母アガトの故郷の田舎町イスーダンにやってくるが、そこではアガトの兄ジャン=ジャック・ルージェの莫大な財産をねらって、ルージェの内縁の妻フロール・ブラジエ(通称「ラブイユーズ」)と兵隊あがりの乱暴者マクサンス・ジレ(通称マックス)がひそかな陰謀をたくらんでいた。
そこに性悪という点では一歩も引けをとらぬフィリップが割り込んでくることになる—こんなふうに話が展開してゆく『ラブイユーズ』は、悪漢小説として無類のおもしろさをそなえているばかりではなく、制御不能の欲望や情熱に翻弄される人間の不幸をとことん描ききって余すところがない。絶望に沈み、自殺を決意してさまようリュシアンの前に、スペイン語訛りの謎の男が現れる…。

(第7巻)金融小説名篇集
バルザック著、吉田典子・宮下志朗訳/解説、藤原書店、1999年。

『ゴプセック』『ニュシンゲン銀行』『名うてのゴディサール』の三篇は、「人間喜劇」中のいわば「経済もの」と呼ぶべき中篇である。
強欲きわまりない高利貸しの、深遠な人間観察力と壮絶な最期を描いた『ゴプセック』、大銀行家ニュシンゲン男爵の驚くべき財産形成について語る『ニュシンゲン銀行』、地方を征服すべくやってきたパリの名うてのセールスマンをめぐる滑稽話『ゴディサール』、いずれも「金銭」や「商売」をめぐるドラマを描いた傑作群である。
『骨董室』、それは革命後の近代化に背を向け、旧制度を生き続ける地方貴族のサロン。
これは、そこに生を承けた青年ヴィクチュルニアンのパリでの冒険と破滅の物語である。
それは由緒ある家柄という純粋さの宿命であろうか?もうひとつの『ペール・ゴリオ』。

(第8・9巻)娼婦の栄光と悲惨 悪党ヴォートラン最後の変身
バルザック著、飯島耕一訳/解説、藤原書店、2000年。

[上]--『幻滅』で出会った闇の人物ヴォートランと美貌の詩人リュシアン。
彼らに襲いかかる最後の運命は。
[下]--『幻滅』で出会った闇の人物ヴォートランと美貌の詩人リュシアン。
彼らに襲いかかる最後の運命は。

(第10巻)あら皮 欲望の哲学
バルザック著、小倉孝誠訳/解説、藤原書店、2000年。

若きラファエル・ド・ヴァランタンは、死んだ父のわずかな遺産で放蕩三昧に明け暮れたが、その空しさに気づき、裕福なロシア人女性フェドラとの恋も破れて絶望におちいり、自殺まで考えるようになる。
そのような時、たまたま入った骨董屋の主人から一枚の「あら皮」をもらいうける。
それは、持ち主の願いをたちまちかなえてくれるが、同時に、願いがひとつ実現するたびに縮まっていく魔法の皮である。
ラファエルは豊かになり、可憐なポーリーヌと束の間の幸福な生活をあじわうものの、あら皮は木の葉ぐらいの大きさに縮小してしまう。
やがてラファエルは病気になり、温泉地に行って保養するが健康は回復せず、パリに戻ってくる。
そしてポーリーヌへの激しい欲望に苛まれながら息絶える。

(第11・12巻)従妹ベット 好色一代記
バルザック著、山田登世子訳/解説、藤原書店2001年。

1838年夏のある日、パリのユロ男爵家では、香水商上がりのクルヴェルが男爵夫人に愛を打ち明けていた。それは放蕩者の男爵に、長い間手塩にかけた愛人を横取りされた商人の復讐でもあった。同じ頃、男爵の娘オルタンスは、家族に従妹ベットと呼ばれている独身の老嬢から若い彫刻家を庇護していることを聞き出していた。19世紀フランス社会の動く模型、バルザック世界が展開する…。

(第13巻)従兄ポンス 収集家の悲劇
バルザック著、柏木隆雄訳/解説、藤原書店、1999年。

美術の収集にすべてをつぎ込んだ老音楽家ポンスは、富裕な親戚を訪れて寄食生活を送るが、世事に疎い「貧乏人」の彼は締め出しをくって、同居するドイツ人シュムッケの友情にすがる。
親戚の冷たい仕打ちに打撃を受けて床についたポンスを世話するアパートの門番女シボは、収集品の膨大な価値を知り、古道具屋レモナンクと共謀してそれを奪う計画を立てた。
ポンスを締め出した親戚は、真相を知ると、シボの上さんに加担する悪徳弁護士とその友人の医師と手を組み、死に追いやったそのポンスの宝物をまんまと手に入れる。
老音楽家二人の清冽な友情を軸に、パリのブルジョワ社会の悪徳をみごとに描いたバルザック晩年の最高傑作。

(別巻1)バルザック「人間喜劇」ハンドブック
大矢タカヤス編、奥田恭士・片桐祐・佐野栄一共同執筆、藤原書店、2000年。

[目次]

主要人物辞典
「人間喜劇」家系図
「人間喜劇」年表
「人間喜劇」と服飾

(別巻2)バルザック「人間喜劇」全作品あらすじ
大矢タカヤス編、奥田恭士・片桐祐・佐野栄一共同執筆、藤原書店、1999年。

『人間喜劇』全百篇のすべて。
要約にあたっては、既に結末を知っている執筆者がバルザックの意図を先取りして自分で再構成するようなやり方は避け、可能な限り語りの順序や場面の雰囲気を再現するように努めた。

バルザック
高山鉄男著、清水書院、1999年。

バルザックの『人間喜劇』には、物欲と虚栄、出世欲と情欲、青春の希望と愛、信仰と献身など、およそ人間にかかわるすべてが描かれている。
そこに語られている絢爛たる物語の数々は、「西欧の千一夜物語」というべく、また近代市民社会そのものの栄光と悲惨の物語でもある。
だが描かれているものは、栄光よりも悲惨なのであって、バルザックは、「近代」というものがいかに空しく危険かということを描いたのである。
ところでこの膨大な作品は、一人の天才の苦痛に満ちた生涯の代価として後世に残されたものだ。
借金に押しつぶされそうになりながら日夜執筆にはげみ、途方もない夢を追い続け、多くの貴婦人に愛された男、多くを考え、多くを愛し、多くを書いたバルザックの生涯は、『人間喜劇』そのものと同じほどに驚くべき数々のドラマに満ちている。

バルザックがおもしろい
鹿島茂, 山田登世子著、藤原書店、1999年。

バルザック世界のための案内書。
『バルザック「人間喜劇」セレクション』プレ企画。

バルザック 生誕二百年記念論文集
日本バルザック研究会編、駿河台出版社、1999年。

『ゴリオ爺さん』、『谷間の百合』など、文豪と呼ぶに真にふさわしい小説家バルザック。
その生誕200年を迎えて、日本のバルザック研究者が総力を結集して、この高峰の山襞に深く分け入る。
現在の研究水準を如実に示す研究論文集。

[目次] 大矢タカヤス 「バルザックにおける時間の感覚」
澤田肇    「パリの小説家バルザック : 『ヴァン・クロール』の場合」
片桐祐    「バルザックのオリエント : 目のなかのインド」
山崎朱美子  「『人間喜劇』の中のアメリカのイメージ : 桧舞台パリと対極の蛮地」
西田俊明   「バルザックと鉄道 : 「私は北部鉄道の株主です」」
早水洋太郎  「バルザックの経済小説を読む : 『ウジェニー・グランデ』」
藤原団    「『人間喜劇』における家族 : 『ウジェニー・グランデ』の場合」
中村加津   「『田舎医者』の優しさ : 『人間喜劇』に描かれた男性の母性について」
村田京子   「寓意としての「娼婦」 : 『知られざる傑作』を中心に」
中山眞彦   「ロマネスクと知 : 『十三人組物語』について」
大下祥枝   「バルザックの小説におけるメロドラム的側面について」
東辰之介   「『人間喜劇』の演出家たち」
岡田充代   「タデ・パス 登場人物・作者・役者? : 『偽りの愛人』について」
私市保彦   「仮面とゴシック : 『暗黒事件』試論」
飯島耕一   「ヴォークリューズから来た密偵」
宇多直久   「正義の主題とヴォートラン最後の物語」
道宗照夫   「『女性研究』小論」
奥田恭士   「テクストの変奏 : 『グランド・ブルテーシュ』をめぐって」
佐久間隆   「バルザックにおける「無垢」の一側面 : 『ピエレット』について」
松村博史   「『結婚の生理学』の教えるもの : 夫婦生活と病理学」
加藤尚宏   「『二人の若妻の手記』について」
五島学    「声にかんする逆説 : バルザックの音楽小説についての一考察」
柏木隆雄   「『アルベール・サヴァリュス』 : 声とまなざし」
中堂恒朗   「バルザックとコンサントリックな世界」
西岡範明   「青年バルザックの天使像」
芳川泰久   「顔面角・論 : あるいは描写のパラダイム変換をめぐって」
博多かおる  「どよめきと噂」
多田寿康   「人物「名」再登場」
石井晴一   「バルザックのある語法について : il y de... 及び il s'en va de...」
武本尚也   「悪魔と魔女のいる『風流滑稽譚』」
伊藤幸次   「『人間喜劇』といくつかの絵入り本」
泉俊明    「「全集」の夢」
霧生和夫   「ネットワークとしての『人間喜劇』」

バルザックの世界
石井晴一著、第三文明社、1999年。

[目次]

第1部 バルザックを読んでみよう
第2部 バルザックの生涯と作品

1997年

ジャーナリズム性悪説
バルザック著、鹿島茂訳、筑摩書房、1997年。

─自身がジャーナリストであったバルザックの皮肉にみちた、そして真実を衝いたジャーナリスト論。「新聞記者を振り出しにして、やがて大臣に取り入り、次にこれを裏切るが、自分ではなかなかうまく立ち回ったと思っている」新聞記者や<大臣病亡者の政治評論家><狂信的著述家>などなど、19世紀中葉のフランス・ジャーナリズムが生き生きと描かれている。ほとんど今と変わらない。

1996年

バルザックを読む漱石
飯島耕一著、青土社、1996年。

漱石は『ゴリオ爺さん』をどう読んだか。
漱石という俳句俳諧的精神が、「死ぬか生きるか烈しい精神」のヨーロッパ文学と格闘する—。
著者はここ十数年、バルザックという世界最長の文学と、世界最短の文学、俳句俳諧の双方に遊んできた。
エロスか滑稽か、その彼方に立ち昇る文学の本質と核心。

1995年

シャベール大佐
バルザック著、川口篤・ 石井晴一訳、東京創元社、1995年。

ナポレオン帝政下、ロシア軍との激戦で命を落としたはずの英雄、シャベール大佐が生きていた。
死亡証書を取り消し、再婚していた妻と自分の地位・名誉を取り戻すべく、大佐は代訟人デルヴィルの許へ。
無一物となった男が法の力によって人生をやりなおすことはできるのか。
人間の愛憎、社会と法、バルザック「人間喜劇」の真髄。

1994年

海辺の悲劇 他三篇
バルザック著、水野亮訳、岩波書店、1934年第一刊。(画像は1994年復刊のもの)

一族の名を汚した子を父みずから殺す表題作『海辺の悲劇』。
ほか、『グランド・ブルテーシュ綺譚』『復讐』『フランドルの基督』を収録。
バルザックの幻視的短編小説集。

1993年

わが兄バルザック—その生涯と作品
シュルヴィル.M.ロール著、大竹仁子・中村加津訳、鳥影社刊、 星雲社発売、1993年。

兄に対する絶対的信頼と尊敬に裏打ちされた妹の記録。
この伝説の底に流れる兄への想いは、読み進むにつれて、私たちの魂を深く感動させる。
バルザック研究の基本的資料。

1992年

風俗研究
バルザック著、山田登世子訳・解説、藤原書店、1992年。


1989年

セラフィタ
バルザック著、蛯原徳夫訳、角川書店、1954年第一刊。(画像は1989年復刊のもの)

男女の性質が融合し、肉欲を離れた両性具有の裡に実現される天使のような恋愛を描いた本書は、バルザックの「神曲」とも「ファウスト」ともいわれる「神秘の書」である。

1984年

人間喜劇の老嬢たち─バルザック一面─
寺田透著、岩波書店、1984年。

バルザック壮年期の一連の作品には、なぜか独身者が数多く登場する。地方生活を舞台にくりひろげられるドラマの中の老嬢たちを通して、十九世紀フランス社会の現実が鮮やかに浮び上ってくる。当代きっての読み手によって、読者は、人間喜劇という巨大な社会の一隅に導かれ、小説の本当の面白さをたっぷりと味わうことになるだろう。

1982年

バルザック初期小説研究「序説」
道宗照夫著、風間書房、1982年。

[目次] 第1章 『わが生涯のひと時』
第2章 『コルシーノ』
第3章 『王妃の侍女』
第4章 『小間物商王』
第5章 『火付け役の頭』
付録(『無実の最高公証人』;『軽はずみと幸福』)

バルザックと歩んで
九野民也著、高文堂出版社、1982年。


1979年

食卓のバルザック
ロベール・クルティーヌ著、石井晴一・ 渡辺隆司共訳、柴田書店、1979年。


1978年

バルザック 天才と俗物の間
霧生和夫著、中央公論社、1978年。

バルザック─『人間喜劇』という厖大な作品群を後世に遺し、近代小説の祖となったこの人物はまた、富と名声と貴族の称号に憧れる、度し難いスノッブでもあった。
この俗物と天才がどのような形で共存していたのか。わずか二十年間で不滅の光芒を放つ傑作を次々と生み出した天才を、つき動かしたものとは。
いまなお、世界各地で愛読されている永遠の天才の魅力を、生涯と作品の両面から描き出す。

1973年

真視の人バルザック そのヴィジョンの世界
アルベール・ベガン著、西岡範明訳、審美社、1973年。

バルザック─『人間喜劇』という厖大な作品群を後世に遺し、近代小説の祖となったこの人物はまた、富と名声と貴族の称号に憧れる、度し難いスノッブでもあった。
この俗物と天才がどのような形で共存していたのか。わずか二十年間で不滅の光芒を放つ傑作を次々と生み出した天才を、つき動かしたものとは。
いまなお、世界各地で愛読されている永遠の天才の魅力を、生涯と作品の両面から描き出す。